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技術を継承するためにできること 『糸へん』から抜けられない使命

   

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空洞化が怖いんです

私は良い時期にアパレルに就職し、パタンナーとして学ぶ時間がある、そういう余裕のある時期の人間なので、たくさんのことを研究して学んできました。
それが私たちの世代の少し下くらいから、ボコっと空洞になっちゃってるんですよ。
パターンの世界においては、マスターを引ける人がいない。1から全部起こせる人がいないんですね。
CADは確かに便利なツールなんですよ。ツールであるだけで中身がわかってる人間が触らないことには、ほんとにとんでもないことになる。
それを痛切に感じているんですけど、パタンナーがCADをパズルのようにしか触っていない。
白い紙を渡してパターンを引いてくださいと言ったら引けないんですね。
空洞化がすごく怖いんですよ。
私自身は空洞を埋めるために専門学校でパターンを教えてきて、そこで学んできた子たちが後の受け皿がなかったんですね。
就職もない時期ですし、学校がその上を目指すためのクラスを開講することもなく。
それで生徒たちから『先生どこかで教えてほしい。このまま辞めてしまうと将来自分でひけなくなるから』って声がかかって、教えています。みんなかなり遠くから通ってきてるんですよ。

工場とか、縫い手としても、20代30代の人ってほとんどいないですね。
パタンナーもCADのオペレーターみたいな方も多くて

ほんとオペレーターという形になっちゃってるので、職人ではなくなってきてるのは事実なんですね。だから縫製においてもそうだと思います。
昔あった縫製工場にも、普通のパートの奥さんで、すごいなって思うような(方がいて)そんな方がもう違うことされてるんですね。
近くにも工場さんがあったんですけど、結局小ロットのものが来なくなってしまって廃業ですよ。私のまわりの工場さんみんな廃業されましたから。なんてもったいないんだろうって。
ほんとに裁断の技術がすごい方だとか、皆さん高齢化されちゃって。
その方たちを指導者とすべきだなってすごい感じるんですけどね。
・・・なんか違う話ですけど、ずっと思いの丈がそこにあるので。

私たちの目的は、まずちゃんと職人さんみなさんが収益を取れるように。
そして若い方に入ってきてもらう。
お給料がちゃんと取れて、技術が次の世代もその次の世代も継承されるような。そういう未来をつくるためのサービスなんですね。

アパレルじたいが全然ダメじゃないですか。(地方は特に)存続していかないんじゃないかなって。

メーカーさんからお仕事が来るのに依存しているのが問題かもしれないですね。うちを経由してエンドユーザーに直接職人さんをご紹介できる。そういう風にしていきたいんですよね。

そう思います。私自身、仕事もすごく減ってるし。
一時は寝る間を惜しんでやってて、10年前ぐらいですけど。
いまはCADの修正の仕事ばかりが来るような状況で。
すごい奢った言い方になりますけど『これでは自分の技術がもったいないな』って思うんですよね。
私も元々はパタンナーとしてパターンを引くのがすごい好きなんですね。だからずっとやってるんですけど。
いまはパターンを引く場がそんなにない。依頼される機会がないんです。
3

やめようやめようって思っていても完全に抜けきれてないよな

一時期は収入につながらなくて、すごくしんどくて。他に時給がいいところに働きに行った方がずっといいって、変な話、ハタ(機織)工場のパートに行こうかなと思ったこともあったんですけど、時給780円で。

安すぎる

ミシンをただひたすらかけるだけなんですけど・・・
自分自身が<糸へん>(のつく仕事)からやめようやめようって思っていても、完全に抜けきれてないよなって。

ミシンを使えるようなところの仕事行こうと思うなんて
・・・情けないと思って。

もったいないですね、それだけの技術をそこで使われるって。

いまはすごく考える時期なんです。下がもう中学生になって手が離れて、自分の時間が取れてきて。いろいろ模索しているところでnutteさんに登録したんですね。

そもそもほとんどパターンの仕事はない状態です。
サンプル縫製とかはあるんですけど、はっきり言ってこの辺りの地域から来る仕事は工賃がめちゃめちゃ安いんですよ。
裁断から何からそれに1日程度かかるようなもので、アルバイトの方が良いぐらいの工賃です。
それはできませんって。『でも仕事ないでしょ』って上から目線なんですよね。『仕事がないんだったらそれくらい当たり前よ』って。

いやぁ日給換算したら大変なことですよね。

そんな仕事も、安い仕事だから適当にするっていうのは私の中では違うと思って。
それで関東の縫製を少し回してくださるところからの仕事を受けたりもしていました。

あとネットショップに子ども服と大人服を出してるんですね。
他にも手作りイベントとかありますよね。大きなイベントから、小さな公園とかでやるようなイベントにも、服とかを持って行って販売したりしています。
そんなにいっぱいいろんなことをやってても収入になんて繋がらなくて、いっそのこと糸偏(のつく仕事から)足を切ろうかなって思ってた時期もありました。ほんとに。

4

技術があるのにかわいそう

わたしのまわりにも縫製工場で縫ってる子もいるんですが・・・時給780円ですよ。
その子たちはアパレルに就職してないので仕様書の見方もわからないんですよね。
一応わたしも教えてはいるんですが実体験としてはわからない。ただ、やり取りはわからなくても縫うことに関してはプロですので。

取引先などから私にそういう仕事が来た時に『縫ってみる?』って(周りの人たちに)オーダーもしています。
小さなものしか縫えない人もいるんですけど、すごく綺麗に縫いますよ。
そんな子に『これは活かしていった方がいいね』って言ったら、内職の仕事をもらってきて。
ランチョンマットなんですけど、おもてうらあってぐるりまわりを縫うんですね。
ひっくり返して角綺麗に全部出して、コバ(布の端から1mm~3mmぐらい入ったところにかけるステッチのこと)を
かけるんですよ。それが50円。

中地縫いして返して

丸じゃなくて角だから結構大変だと思うんですね。まわり四隅。

50円ですか

かわいそうでね。子どもが小さいので出られないから。
それでも返品が来るんですよ。角が90度になってないとか。
50円でそれを言われるの・・・もちろん当然なんだけどもちょっと厳しい仕事よって。

それを何枚ですか?

100枚とかですけど
あと、ラミネートも来て。ラミネートも1回穴開くとほどけるし大変じゃないですか。
その筆箱も180円ですよ。ファスナーもつけてタグつけて裏地もつけて。パイピングして。ちゃんと縫える子がかわいそうなんですよ。

安い仕事はほんとに安いんですね。安く売っちゃうので。

安く売ったらそれなりの仕上げでいいんだったら、なんてことももちろんありますけどね。でもやっぱり腕がいるじゃないですか。
そのあたりもかわいそうな子たちがわたしのまわりにも何人かいまして。技術があるのに。

もったいないですね。
合わないと思ったらもちろんやるべきではないですから。
職人さん側でも選んでくださって都合の良いお仕事をしてもらえれば良いです。

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糸へん家族なんです

設備は一式揃ってるんですよね

バキュームアイロンはないんですけど

カットソーもできますね。環縫いもあって。メンズもやってらっしゃるんですね。

一応ですね。
違うなって痛切に感じたのは息子の制服を縫ってやろうと思ったとき。やっぱりちがうって。
毛芯パーツ買おうって注文して(笑)、テーラーの世界になってくるんで。
カッターはあの硬さにはできないです。綺麗には。
軽いもの。ブルゾンとかはできます。
ボタンホールも、叔母が手芸屋さんをしているのでハト目から全部してるんですよ。
機械置いてて。糸偏家族なんです(笑)。だから全部その辺りは。

お仕事されているエリアが糸偏に強い地域だったりするんですか?

別にそういうわけじゃないですね。昔からの付き合いの人がいるだけで。
刺繍屋さんもネーム屋さんもいますので、ちょこっとした刺繍をしてもらったりとか。
そこの社長はこれから先、伸ばしていきたいっておっしゃってて。
商売ベースの値段しか取ってくれなくて、こんなに安いの?って。『安いからこれから食べていくのにどうしようかと思ってる』って。
じゃあワッペンとかああいうのをつくってくださいよ。わたしデザインしてもいいですよなんていいながら。刺繍の図案デザインもやってたんで。
イベント行ったときに売ってきてあげますからなんてそんな話をして。
そうやって困ってる方もいらっしゃいます。
法被(はっぴ)とかに刺繍するすごい刺繍屋さんも仕事薄いわって。言ってますね。

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いくら言っても払ってくれないとかドロドロですよね

私は正直なところ、nutteさんに登録した大きな理由は、(工賃を)取りはぐれたことが、何回もあるんですよ。
いくら言っても払ってくれないとかってもうドロドロですよね。
やり取りもこちらは『払え』、むこうは『知らん』で、あれはもう二度とごめんだなって思って。
やっぱり個人だと最初はすごく良いんですけど、製品が出来上がった後で、支払いの時期になったら値切られたり、支払ってもらえなかったりして。
私、4年かかって払ってもらったことありました。執念でしょう?
間に入ってくれた人がいてその人が立て替えて払ってくれたんですけど、もうすっごい嫌な思いをしましたから。

もちろん私も経験してますね。

それが嫌で。このサービスがいいなって。個人でやっているところで一番しんどいのはそこなんですよね 。

そのために私どもが手数料をいただいておりますので。お仕事のやりとり以外のことは私どもが責任をもってやるのは当然ではあります。
大量生産に対するアンチテーゼの動きって日本でも始まってきていますし、
さらにITを組み合わせるっていう動きも大きくなってきています。
私どももこうやってお会いしていろんな方のご紹介をどんどんしていきたいので
それで最終的にお客さんから選ばれる職人さんになっていっていただければ
我々はほんとに最高だなと思っています。

もうすごい助かります。
期待してます。きっと埋もれてる人いっぱいいますので。
仕事にならないですから。 (縫製を)お仕事にできたらなって思います。
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取材後記


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取材をした時点ではnutteに登録したばかりだった0120factoryさんでしたが、取材直後からたくさん受注していただいています。
文中にあるような<指名をしてもらって受注する>というお仕事やリピートのお客様も多い職人さん。
ご自宅のアトリエもかわいらしく整理されていて、きちんと大切にお仕事をしていらっしゃる様子がよくわかります。
ものづくりへの愛情と、失われつつある技術を継承しようという、意思の強さを感じるインタビューでした。

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