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僕らはプライドを売っているバッグ職人30年のものづくり

   

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現在はご夫婦でオーダー、お直しの店舗を経営されているAlancioさん。その店舗に伺ってお話を聞きました

知識と材料をみる目、一方的じゃないところがつよみ。

どのくらいやってらっしゃるんですか

途中途中で違う仕事もしたことあるんですが30年くらいですね。
このバッグの業界は、モノづくりについてもシステムについてもかなり変わってきてるんですね、その30年間の間に。

僕が初めてやった時は、デザイナーからスタートなんですけど、自分がデザインしたものをパターンに起こすと、隣にパートのおばさんがついていて裁断をしてくれる。
で裁断が終わったものを縫い子さんが企画室の中にいて縫ってくれて、午前中自分のデザインしたものと型紙があがってると、夕方には早ければものになって出てくる。
それを自分で見積もりをとって自分で営業さんに売り込むと営業さんが外で売ってきてくれる、ということだったんですね。
次の会社からヘッドハンティングみたいなもので誘われて、そこで、企画をしてモノをつくるという以外に、商売として利益の出し方みたいなものをそこでものすごく勉強させていただいた。それで職人さんにもお話をできるようになって。
そこで三年間くらいやって、独立をしました。
絵型を描くだけとか、写真を見せるだけとか、先方と打ち合わせをしてアイテムを提案するということだけではなく、生産できるような体制まで整えて、一括りのビジネスをしようかなっていうところで独立をしたんですね
若かったので、その当時から職人さんっていうのは日本にはもう不足してたと思うんですけど、生地屋さんがたまたまかわいがってくれて、2階を貸していただいて、家賃を払わない代わりに、そちらが作った新しい生地でデザインをしてバッグを作るという約束でやりだして。
だんだんこっちのほうがよくなってきちゃって。
生地屋さんの2階からでて、やめて、そこから途中でバブルもあって、かなりいい形でやってたんですけど。途中リタイヤしてやってたんですけどね。ここ数年、またさっきお話した会社に入って。その後この店舗を開きました。
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百貨店なんかは仮に1千万円の品物を買い取っていただいたら、売上が上がっていかないと次の仕入れが起きないですよね。するとどんどん血流が悪くなって、経済的に沈んできて、終わってっちゃうみたいなことがあるので、やっぱり僕としては、高い安いは別として、カスタマイズされた商品を作っていきたいというのがありますよね。

本当に一点ものっていうことを重視してやっていきたいという感じですかね

そうですね。お客様のオーダーをいただいたときにかかるコストとして材料代があるんですけど、その材料も、どうしてもこれがいいといった時には一枚革を買わなければいけない。革っていうのは生き物なので傷があったり、伸縮率が違ったり、伸びる方向が違ったりするので、ものすごく取り都合というのが重要なんですよね。
そうすると悪い革で4割くらい、いい革で2割くらいみて。
みなさんボディばっかり気にしますけど、本当は一番いいところでとらなければいけないところって、<持ち手>だとか、<ショルダーのベルト>だとかなんですよね。

意外ですね
摩耗するところがいいところでないとということですか

そうですね。
一番いいのは人間でいうと首から下、腰の上くらいまで、それをバットっていうんですけど。そこでとらないとだめですね、ベルトとかは。
革を一枚とって、レディースの方が普通のバッグを作ると残るのが半分から三分の一くらいかな。で、革じたいはお客様に最初全部買っていただくので、逆に残ったもので別のものを作る場合には工賃でいける。そうすると小さいもの大きいもの合わせて2本くらい作るとオーダーでバッグ作ったのに1本5万円ですんだよみたいなことになるんですね。
だから基本的にはもう1本1本ですね。お店のスタイルとしては。

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良いバッグは使い心地

すごいざっくりしたことを聞いちゃうんですけど、、「良いバッグ」ってどういうのを言うんですか。

やっぱり使い心地だと思いますね。
もちろん素材は良いものっていくらでもありますけど。
使う人間の立場になって、しっかりした構造になっている。例えばファスナーひとつについても開け閉めが楽だったり、ポケットの中の寸法ひとつでも、計算されてるバッグがいいバッグだと思うんですよね。

留め具とかはどういう基準で選ばれているんですか。

デザイン的にごつく見せたい場合にはしっかりとごついもの。メンズのお客様だと馬具屋さんにいって金具を選んでくるということもあります。

逆にレディースだと繊細なものを

そうですね。お客様によってはどうしてもっていうこだわる方がいると、それこそ300円くらいの金具を1万円くらいかけてメッキしなおすということもありますけど。
極力お客様のわがままは全部きいてあげたいんですよね。

ビジネスだとそうだと思うんですけど巷に並んでるものっていうのは、やっぱり売り損じたくないので、ベーシックなラインが多かったり、コンサバなものが多かったりするんですけど、どうせオーダーで作るんだったらやっちゃえばって。

やっぱりブランドさんのMDしかり問屋さんのMDしかりしっかり販売計画と、コストとしていくらかけていくかってことを基準にやるので、あんまり冒険はしないですよね。

でもやっぱりオンリーワンなので、お客様にとっては。

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オーダーとして喜んでいただく

僕らがお客さんに胸を張って言えるのは、材料ありきで、この材料で作ったらお客様の言う通りにはできないよと。
それはもう当然革の質感も、張り感も。例えばすごい硬い革でやわらかいデザインのものを作ると、段ボールで作ったバッグみたいになっちゃうし、逆に自立しないと形にならないようなバッグをペニャペニャの革で作っちゃうと、当然芯材をいれてがっちがちに作らないといけないし、そうするとやっぱり本来の質の良さってなくなったりするので。
そのへんは最初にお客様と相談をして、素材の提案から、素材が決まった時にお客様がお持ちになる色の提案から、こんなのもいいんじゃない、あんなのがいいんじゃないとかいうことが一緒になってできるので、オーダーとしてお客様に喜んでいただくということができると思うんですね。

実際のところnutteでも相談のチャットのやり取りでかなりディープに行われて、お互いの要望とか状況が理解できたところでスタートすることが多いですね。
Web上ではあるんですけどそれでもやっぱりコミュニケーション一番大事ですよね。

どうしても完ぺきなものを作ってあげたいので、
ここおかしいよねとかチープに見えちゃうよねとか、こんな縫い方してるともげそうであとで嫌がられちゃうんじゃない?ってとこは、最初からその芽を摘んで言ってってあげたいですね。
終わりよければすべてよしで、Alancioさんにたのんでよかったね、結構きれいにできてるよねって。
最初私こうだったけどこうしたんだよとかっていうことがどんどん細かいことがでてくるので、それをもうすこしうまくできたら早いのになって思いますけどね。

nutteでは職人さんがヒアリングをよくしてくれてて、1つの案件に対して何人か応募があって、深くヒアリングして『この人にお願いしたいな』っていう方が成約したりするんですよね。だからいい意味で価格競争ではない別の価値を生み出しつつあるなっていう方向になってきました

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だからなんでもやるんです

例えばこうやって仮縫いをするわけですよ。打ち合わせの時にかぶせをもう少し深くしたいとか、ここはこういう素材にしてみるとか、裏地の作り方はこうしようよとかっていうことを全部こうやって書き込んでいっちゃうんですけど。でそれを元にしてもう一回型紙を成形して。
革は一発勝負なので。失敗することもできないし。
すごくかっこいいこと言うわけじゃないですけど、僕はお客様にプライドを売っているわけですよ。
ここでモノを作って、よかったねって、すごく気に入った、すごくかっこいい、すごく使いやすい。
やっぱりいいものを作ることが職人さんのプライドなので、モノを売ってるんじゃなくて本当に、プライドを売る。
失敗しちゃったよとか、これちょっと短かったけど我慢してとか、そういうのはもう絶対ないわけですよ。

妥協なしということですね

そうですね。だから150%くらい、素材を選んでこういう打ち合わせをしておけば間違いないなっていう方向でお客様と打ち合わせをしてオーダーを確定にするので。修理もそうですけど、ちょっとでも危ないなって思ったらもうやらない。自分が無理した状態で、これちょっと切れちゃいそうだけどやってやるかなんていう気持ちになっちゃうと、やっぱりだめなわけですよ。糸をとってちょっとこうやって糊ついてるところをはがしてみると、古いのだと剥がれてしまったりするともう戻せないので。それは経験値の中でこれ行っちゃうんじゃないかなと思ったらもう、ちょっともう古いので、外して糊をめくったときに切れちゃう可能性があるからできませんっていうふうに言う。
サービス精神で、優しい気持ちでやっても、結果がしっかり伴ってお客様に渡してあげられないと、アウトなので、それはすごいシビアにやりますね。

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本当にフルでカスタマイズされたものつくるじゃないですか。
ある方が引退されてから具合悪くなっちゃったんですね。引退してこれから少し遊ぼうかなっておもったら病気になっちゃって。後ろからガスボンベみたいなのを背負って生活することになってしまって。
あれが恰好悪くてどうしてもいやなんだって言ってるって甥っ子さんが相談にみえて。酸素ボンベケースを作り変えてくれないかって。
医療用だから強度とかも一回全部見せてもらって。ガスどれだけ残ってるかのメモリが見えるように窓も作ったんですが、すごい感謝されて、あれがあるから出歩くようになったって言って。

ご本人がここを通った時に、ボンベ背負って歩いて、とまって、向き直って、「ありがとう」っておじぎしていくわけですよ。そういうときはやっぱりうれしいですよね。
すごい喜んで、それを見せてやるからって歩くようになって少し健康になったって言ってた。

だからなんでもやるんですよ。

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取材後記


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革素材は1度針を通してしまったら穴が開いてしまうのでやり直しがききません。またバッグは長いスパンで持つものです。それをとても大切に作ってくれる、いわゆる『職人』という言葉がぴったりのAlancioさん。材料にも歴史にもとても詳しく出てくる言葉ひとつひとつに感心しきりでした。

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