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能動的な紳士服職人

   

元縫製職人である代表伊藤と、職人さんの対談形式で行うインタビュー。柔和な笑顔で物腰も柔らかなArmoniaさん・・・ですがイタリア仕込みの情熱がとても素敵な紳士服の職人さんです。nutte初期の職人インタビューから1年、いま思うことをお聞きしてきました!

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1年の歩み

以前お話をお聞きしたとき(nutteブログインタビュー記事)から1年ですが、お仕事としてはいかがですか。

(アトリエを始めて)2年になり、アパレルからの展示会サンプルを進めながら、ようやくオーダースーツの外注などの仕事が回り始めた感触です。HPを見つけて下さった事がきっかけで始まりつつある仕事もあります。また、nutteさんのサイトからダイレクトメールを貰う事も時々あります。 一人でやっているので一つの仕事だけに絞らずに出来るだけ色々な事を絡めながら縫製の仕事に携わっていたいですね。

nutteに登録してくださったのもかなり初めのほうですし、積極的ですよね。

ずーっとアトリエの中で、一人で縫製をだけやっているのでは無くある程度、積極的にやっていかないと情報が入ってきませんし、こうやってnutteさんとお知り合いになる事も無かったと思います。 あの時、nutteさんを存じたのはネットで都内のサンプル縫製工場やお直し屋さんを調べていた時に、偶然いれたキーワードにヒットして見つけました。 その時思っている事や必要だなと感じていると自然と調べるようにはしてると思います。

このサービスを通じて何か変わったことってありますか?

そうですね、劇的に何か変わった事はまだ無いのですが、自分の強みでもある紳士服をnutteさんを通じて知って頂けるのは大きなメリットですね!!
サンプル縫製でもしっかりとしたジャケットやコート縫える所は段々少なくなって来ていると思います。その時にnutteさんを利用した方が必要なキワードで自分と繋げてくれる確率は何倍にも跳ね上がりますからね!!ちなみに、認定されてある職人さんだから、さらにグっとかな(笑)

(佐藤)やっぱり、お仕事は紹介が多いですか?

そうですね、今まで居た会社の繫がりから広がっています。
それでも、積極的に動いていないとチャンスには巡り会えないですよね。
なので、他の所からもお仕事へ繋げられる様に 今は、コワーキングスペースを運営している所で洋裁教室の講師も勤めてもいます。
色んな方に出会える場所でもありますから、機会がある時は初めてお会いする方ともお話をしております。

きちんと情報をつかんで、動いていらっしゃるところがすごいですね!

そうでないと、今のサンプル縫製って本当に難しいお仕事が来るんですよね。 
だから、常に何かしら新しい事を取り入れていかないと斬新なデザインやパターンの変化・新しく開発される生地の変化に対応が難しくなりますよね。

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1枚のプロフィールとジャケット2着を持ってイタリアへ

(佐藤)イタリアへの留学はどのような経緯だったのでしょうか。

専門学校を卒業して、都内のサンプル工場に3年間勤めました。
その時に先輩の職人さんから「ジャケットを1着丸縫い出来ないと一本立ちは難しいよ」と話を聞いて、その間にスカートからジャケット、ブルゾンまで縫えるようにしました。 さぁそろそろ、と次の事を考えていた頃に、帽子を作っている叔父から「やるなら一流の事をやりなさい」とアドバイスを頂いて、だったらいっその事、海外で学ぶかと思いイギリスかイタリアに行くことを決めました。 まぁ、自分の性格的に、行くならかなと・・・陽気な国なら簡単に雇ってもらえるかなって(笑)

語学留学中に、仕立て屋さんを何件か廻ろうと思っていました。
イタリア語で書かれた1枚のプロフィールと、日本で作ったジャケット2着を持って、あとは、その街のタウンページの職業欄を破って廻ろうと思ってたんです。
そうしたら、偶然にも最初の1件目の仕立て屋さんが「見に来ていいよ。」って言ってくれたんです・・・のちに自分の師匠になる人でした(笑)。

その後も、ナポリやフィレンツェにも訪れて、日本でも知られている仕立て屋さんとも会う事が出来たんですが、ビザとは別に滞在許可書という書類の関係もあって、元いた街の仕立て屋さんで修行生活が始まりました。

初めの1年間は言葉が全く話せなかったので半年くらいしか仕事場には通えませんでした。
ビザが切れて、帰国してからは早く戻りたい一心で最低限の渡航費用をアルバイトで貯めましたね。
2度目のイタリア生活は仕事場で住込みでした。ウケるのが師匠が「折りたたみのベッドがあるから、キッチンに住んでいいよ。」って(笑)。朝8時から夜の9時まで仕事してご帰宅はお隣のキッチンですよ(笑)

まぁ、仕事を手伝っている事で覚えられる事も沢山ありましたけど、嬉しかったのは週末に受け取るお駄賃でしたね。
少しでも収入があるのは助かりましたが、何よりも少しでも役に立てているんだなと実感が持てる事で『もっと覚えよう』、『もっと覚えて新しい事を教えて貰おう』と気持ちが前へ進む事でした。
師匠の技術は素晴らしくて、機械では出せない美しさがその手の中にあるんですよ。 手がもう 違う生き物ように動く様は、何十年と積み上げられてきた技なんだと思い知りました。だから、いつ見ても「なんて凄いんだろう。」って心の中でため息をついてましたよ。 その時ですね、静かな中で針仕事をしている空気感に心が奪われて・・・師匠のように洋服が縫える こんな時間が過ごせたら最高だなって、自分も仕立て屋になりたいと思ったですよね。

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ビザの期限が近づいて来ていた時に、ローマにある仕立て屋の洋裁学校が主催している技術コンクールが各地方で予選大会がありました。師匠も予選大会の審査員の一人でしたので「お前も出てみるか?」と取り計らってくれて、外国人の自分は<参加証>という形でしたが仕立て屋さんの登竜門でもある、名誉あるコンクールに参加出来た事は何よりの財算ですね。
これによって、自分がただイタリアの仕立て屋で学んで来たのでは無く、ある一定のレベルある方について技術を学んで来た事を証明できる事は、日本に戻って来て始めるイタリア仕立てのオーダースーツを作る仕立て屋として大きな強みになりました。
ましてや、自分はサンプル縫製での経験もある為、これから作るオーダーメイドの洋服に対して柔軟な考え方で自分だけの洋服が作れると思います。

もう少し先になりますが、スーツはもちろん、カジュアルな洋服にもオーダーメイドで対応したり、デニムのパンツだってなんだって出来る事に沢山の可能性があるのだと実感してます。
なので、今がとても楽しいし、これからが楽しみでもあります。

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洋服を2人で作るっていう信頼関係

(佐藤)日本のオーダーの文化についてはどのように感じられますか。

イタリアでオーダーメイドの仕事を見て来て感じることは、
日本でオーダーが好きな方って、ファッションや流行にとても敏感な方が多いですよね。
あと、価格についてもシビアですね(苦笑)。

なので、私は相手との信頼関係を築くためにも洋服造りに対する想いやそれに使用される副資材や手仕事の細かさ等を見せて、触って、納得して貰い、Armoniaで作られるオーダースーツが自分の為だけに沢山の時間を費やして出来上がることを伝えてます。
そこから、相手の要望を聞くようにしてますね。

イタリアにいた頃は、お客様が来て生地を選んで師匠に「お願いねっ!」って言って終わってましたよ(笑)。
常連のお客様が多いってこともあるんですけど、見てると皆さん自分たちの要望をあまり伝えてないようでした。
デザインや流行のスタイルもあるのでしょうけど、師匠の所で作るオーダースーツは彼だけにしか作れないシルエットやスタイルが好きで来られてるんですよね。
そこに着たい人と作る人の信頼関係だったり、職人さんとして師匠の人柄や技術に尊敬の念があるだと思います。

なるほど。選ぶだけの既製服だと、一方的に与えられた方が楽ですもんね。オーダーっていうのはお客さんと職人さんが一緒に作るんですもんね。

そうなんです、お客様の気持ちと私の想いをカタチにしていくのですが、最近、始めたオーダースーツの外注仕事では、依頼先との温度差を感じることがあるんですよね。
補正した洋服が戻ってくる時に感じるんですが、色んな所にピンを留めて来るんですけど、「あれっ?このピンって何を意味してるんだろう。」って思う時にお客さんの体型はもちろんですが、日常的にする仕草や姿勢を気にしてるんだろうかなぁ・・・いつも自分が考えてる事や想いが戻って来た洋服に反映されるのだろうか?って。
補正するフィッターさんの補正の感覚と自分の感覚の違いに少し戸惑ったりしてます(笑)。

寸法だけじゃ分からないですもんね。

そうですね、やっぱり直接お客さんと対話しながら、自分自身で補正をしないとArmoniaの洋服にするのは難しいなって思ってます。

なんか色々とピンときました。例えば店頭の販売員とお客さんもだんだん関係性ができてきて、お互いの信頼関係があった上での対話で購入したりとか。オーダーだったらその信頼関係の上でちゃんとものが出来ていくっていうことですよね。

そうですね。

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なるほど。あいだに人が入ってしまうことによって、やっつけ仕事をすると、結局『安いこと』しかメリットがなくなるんですよね。

(佐藤)nutteでも近いことが起こっていて、個人で依頼をあげている方は同じ方になんども指名でお仕事を依頼していて、お互いにだんだん好みなどもわかってきて本当に良い信頼関係だなっておもいますね。

「信頼」って必要ですよね。職人からしても指名を受けて頼られた仕事に対する気持ちは、全然違いますよね!!
ほんとうに気持ちが入って縫い上げていく仕事って大切ですよね。

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師匠・弟子に恵まれる

(佐藤)今後お弟子さんをとられたりはしないんですか?ちょっとキッチンで寝かしたいとか。(笑)

あははっ(笑)。寝かせられるアトリエにするには、もうひと踏ん張り頑張って今の流れをもっと大きな流れに変える必要がありますね。
実際の所、まだ自分自身もこのアトリエで寝泊まりする事があるんですよ。この裁断台の下には、いつでも寝ていいように布団がありますよ。

そうですね、自分のことを知ってくれた若い子が訪ねて来て「働かせてください。」ってなったら・・・どうするだろう。
とりあえず、話を聞いてチャンスはあげたいですね、私自身がそうであったように。

日本のサンプル工場では、型紙チェックや裁断、縫製もスカートからシャツ、パンツ、ベスト、ブルゾン、ジャケット、コートの順で全て洋服を経験できました。
上司がちゃんと頑張ってる自分の姿を見ていてくれたので、何にでも挑戦はさせて貰えました。
また、自分が恵まれていたのはイタリアに行った時に、師匠がすぐに言ったんです「生地をあげるから自分の服を縫いなさい。」って。
それと、「日本に帰ったら誰が見てくれるの?俺いないでしょ?」とも言ってくれたんです。

いい人だなぁ

やっぱりそういう方なので街一番の仕立て屋だったんですよね。
だから、顧客には街の名士達や昔、貴族だった家系の方もいらっしゃいましたよ。

さっきの話に戻りますが、自分も情熱を持って真摯に洋服作りに取り組んでくれる若い子には、自分が経験したように手を差し伸べてあげられる職人でいたいですね。

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(佐藤)実際にそういう弟子入りしたいっていう方は、いるんでしょうか?

自分が初め行った2005年の時よりも今の方がいるんじゃないですか。
その時よりもイタリアやフランスで活躍されている日本人の仕立て屋さんはいらっしゃいますからね。
そういう方の中には、日本人のスタッフを募集している時もありますから、仕立て屋を志す若い人はアンテナ張ってチャンスを掴んで欲しいですね。
それと分かっていて欲しいのは、職人、プロフェッショナルになることはどの職業にもいえますが、下済み時代が長いってことですね。
技術、知識、経験を習得するにはやっぱり時間はある程度掛かると思います。
そうした中で若い人たちにも将来自分たちも同じようにお客様の前に立って仕事ができるんだと目標が持てる環境づくりが必要ですよね。

いい事ばっかり言ってるとアレですから、悪いことも言っておかないと・・・。
日本だと弟子入りみたいなところはまだ探せばあると思いますよ。
入ったとしてもなかなか続けられないことも現実にはあると思います、理由としては低賃金、長時間労働、職人さんの縦社会的な所ですかね。
収入が低いと将来の不安やその次のステップを踏む為の貯金が出来なかったりしますよね。
労働時間が長いと仕事で学んだ事以外の知識を帰宅してから覚えられなかったり、試作品も作れないまま時間だけが過ぎてしまいます。
気難しい職人さんの元についてしますとなかなか仕事を教えて貰えずに延々と下仕事ばかりってこともあると思います。
だから、後継者が少ない職業の一つなんでしょうね。

実際、自分もサンプル工場からイタリアを経て、日本の仕立て屋に入りましたが昔ながらの風習を体験してうんざりしました。
目標や夢があれば収入が低くても、長時間でも耐えられるんですよ(笑)。
ただし、技術を吸収するスピードが極端に遅いと駄目ですね・・・いつになったらポケットが、襟が、袖が作れるんだろうって不安になるんです。
どれだけ早く仕事を済ませても、終わり無く同じ仕事を縫い続けていました(苦笑)。

そう思うと、後継者が少ない職業を好きで続けられている自分って面白いなと時々思ったりしますよ(笑)。
だから、こうやって今自分に色んな仕事が回ってくるのは、後継者が少ないってことの恩恵を受けているからなんでしょうね。

(佐藤)たしかにそれは難しいところですね。下済みしてデビューですってなった時に仕事がないっていうのは一番問題なんじゃないかなって思っています。

僕から言うと、最初の師匠はArmoniaさんっていう弟子に恵まれたんだと思いますよ。師匠にとっても、良い弟子が来てくれたっていう感触ってあると思うんですよね。本当に職人さんとお客さん弟子とかもそうですけど、信頼関係なんでしょうね。

洋服に困ったことがあればあそこ行けばいいよねって

(佐藤)お子さんが生まれたら縫製は教えますか?

将来、子供がやりたいって言えば、教えるとは思いますけど。たぶん先に「やめたほうがいいよ。」って言いますね(笑)
やるんだったら海外に出て仕事をして欲しいと思ってますよ。
それで多くの人の役に立って幸せや感動を伝えられるようになって欲しいかな。
オーダースーツでも同じように人を幸せや感動を伝えられるんですが、極端に少ないから限られるんですよね(笑)

10年後20年後の展望はいかがですか。

20年とか先過ぎてどうなってるか分からないですけど、洋服に困った事があればArmoniaさんがいるよねっていうような人になっていたいですかね。
アパレルでも、オーダーメイドでも口伝いで、あそこに行けばいいんじゃないのっていう風に!!

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取材後記


 

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とても柔軟でとても穏やかに何でもこなしてしまうArmoniaさん。
キッチンで寝泊まりしながらイタリアで修行したお話も、なぜか素敵な生活に見えてしまいます。
常に情報を取り入れ、真摯に学び、すぐに実行する行動力を持つArmoniaさんの活躍がとても楽しみです!

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