靴の王子様
元縫製職人である代表伊藤と、職人さんの対談形式で行うインタビュー。番外編で本日は靴職人さんに靴を作ってもらおう計画です!レディース靴ということでわたし佐藤が行ってまいりました!
靴のオーダー
まずは足を計測してもらって、オーダー。
師匠の戸部さんはこのように話します。
靴は長さは伸びないけど、横は伸びます。なので長さは妥協しない、横が楽だからといってそれを買わないこと。
大事なのはかかとがちゃんと支えているか、背筋がすっと伸ばしやすいか。
同じ23センチでもやっぱり計測だけでは難しいんですよね。
長さも幅も同じ値の人がいて、だけど触ってみたら皮下脂肪の厚さが違っていたりして、お客様の感じ方が違うから。
僕がこれですよって言ったって、履くのはお客様だから履き比べてもらって。
歩いてみて意識的に歩幅をとって早く歩けるかどうか。
合っているってことはそういうことなんです。
あとは何をお客様が求めてるのか。どの場面でどうやって履く靴が必要か、その靴に何を求めるのか。綺麗な靴を作りたいし、改まった席用の靴も履いてもらいたいんですよ。
行く時は持って行って会場でだけ履くとか・・・それは履物じゃないでしょう。
だから行く時も履いて行って、また履いて戻ってきてくださいと。そういう靴じゃなきゃいけない。
けどそれで鬼のように営業回ったりはしないでくださいよねって。
だからたくさんの木型をもってなきゃいけない。
足幅の細い方に、『オープントウのサンダル履くのが夢だった』なんて言われたら靴屋として悲しくなっちゃいますよね。
靴屋の常套句では『サンダルだとちょっと小さめのほうがいいですよ』なんて言うんですよ。
でもそんなわけないです。同じに作ってあるから、パンプスでもサンダルでも同じはずなんです。
柔らかくてゆるい靴って聞こえはいいけど、女性の体だって40キロ50キロあるんですよ。
その体重を支える靴が柔らかくて緩いとどうでしょう。やはりある程度の硬さも必要ですよね。
やわな靴は買わないことですね。
初めから目からウロコなお話が盛りだくさんです。
聞けば聞くほど奥の深い靴作りの魅力に取り憑かれたHoshinoさんにも早速お話をお聞きしました。
会計士事務所から靴作りへ
会計事務所からの転職と伺ったんですが、まずはなぜ靴作りのお仕事をされるようになったのかお聞かせください
もともと、靴の仕事をしたいというのはあったんです。
ものづくりってなかなか難しい業界だと思うんですが、その中で何か大きな問題があれば、そこを変えていくことでお客さんもつくし、仕事にもなっていくかなっていうのがあって。
女性の足元を見たときにでかいんですよパカパカしていたり。
パーティーの帰りにゾンビみたいに・・・
なります!!
この人なにしてるんだろうって笑
なにかこれって・・・なんでだろうなって。
浅草の職人のところに飛び込んでって、そうすると色々な問題が見えてきて、でもわからないことがまだまだあるのでそれなら作りながら勉強してみようと思ったのがきっかけです。
優しいですね・・・。実はわたし、ここに来る前に漫画を読んできて
IPPOですね!僕もこの仕事をやっているって言ったら後輩にもらったんです。
オーダー靴って男性のイメージがあって、女子は質より量なのかなって思ったんですがどうですか。
(オーダーの)ニーズはすごくありますね。
他の国に行くとどうなのかっていうところなんですけど、ヨーロッパなどでビスポークなんかは女性もやってますし、フェラガモも元々は女性靴でビスポークでイタリアから始まった。
かたや日本の女性はやはり消耗品として考えるのが戦後の土台としてあります。
ただ戦後間もない頃って物もない時代だったのですが、貴族とか富裕層にはオーダーという文化があったんです。
その当時の採寸なんて、足の周りを鉛筆でべーっと囲んでいいかげんなもんなんですけどね。
そんな時代からオーダーの文化自体はありました。
靴があることの意味
もともとはヨーロッパから入ってきたんですか
そうですね。ヨーロッパの貴族とか王室とかが職人にオーダーをしていて、一般人は靴を履いていませんでした。
ヒールって40〜50㎝ぐらいまであがった時代があるんですけど、それはコルセット絞めて、ドレスが地面までつくような。で、お風呂にも入らないで用をたすときに汚れないようにとか。女性の生活スタイルに合わせてその高さだったんです。
『ルイヒール』ってあるじゃないですか。あれは名付けの親がフランスの王室のルイで、あの方は男性でヒールを履いていた。これはひとつヒールというのが自分のポジションや権利を表していたと言われます。
そういう時代もあって、いまはアメリカのほうで研究している人がいて、なぜ女性はヒールを履いて、男性は履かないのかというのは『セックスシンボル』だという見解がほとんどです。
やはり立ち姿が変わります。自然とお尻が出て、腰もくびれてセクシーでしょと。
元々ライフスタイルだったり、人体科学みたいなものがそこにあるんですね。
日本だと5センチぐらいのヒールが多いのですが、これはお尻が出過ぎず、背が伸びて、すっと立ったときに美しく見えるという話を聞いたことはあります。
最近は高いヒール履く方が多いですよね。
ルブタンの真っ赤な靴を、公道で履くのはおかしくて、あれは基本的には赤い絨毯の上で履くものなんです。歩く道具ではないんです。
靴には本来用途というものがあって、TPOというものがあるんですね。
お友達から聞いたのですがママになって、ヒールを履かなくなって、女性としての性を忘れそうになるって。子どもをつれてヒールを履くと『TPOわきまえてない』と言われてしまったりすると。
だけど、お出かけをするときにヒールを履くとすごく気分が上がったり、女性だっていうことを思い出すということを聞いたことがあるんですね。
じゃあ例えばTPOに合わせたヒールがオーダーできたりとか、女性のライフスタイル自体が変わっていくんじゃないかなって思うんですけど。
そうですね。
ほんとはちゃんと持つものを買って履いていれば下駄箱にある靴ってどんどんたまっていくはずなんですね。
ところがメーカーさんによっては1〜2年で壊れるように作っていて、買いかえていくようにしていて、洋服のクローゼットと下駄箱では下駄箱のほうが少ないというのがあります。
ちなみに男性ですがヒール履いてみたりします?
もちろん。歩くのは大変ですけど立つのは大丈夫ですよ。
受け継がれる技術
靴をオーダーした後、オーダー靴に必要な木型の倉庫を見せていただきました。
(伊藤)木型がすごいありますね!
(戸部さん)あれは彼にプレゼントしていく最大の財産です。
ぼくだっていつまでも生きてるわけではないですから、若いお客さんは彼に引き継いでもらわないと。
結局どんなオーダーにも応えるにはこれだけ木型を用意していないと無理なんですよ。既製品にも5E(幅の広い物)の靴がありますけど、デザインが良くなくて、足が大きいんだからしょうがないでしょうっていう感じなんですよ。
ぼくはそれは失礼な話だと思っていて、だから木型屋さんに感謝してます。こういうのがあって、その方のために靴を仕立てることができれば酷いもの履かされているように見えないでしょって。お客様はすごく喜んでくださるんですよ。5Eでも素敵な靴で。
(伊藤)これを引き継いでいくのは本当に大変なことですね。尊敬します。
(戸部さん)つまんねえ商売なんですよ。
(伊藤)でも先ほど隣で見ていて思いましがけど、やっぱり女性が足の大きさを測ってもらって靴をオーダーしているときの幸せな感じってないですよね。
(戸部さん)金沢から来てくださってた方で、この方は19センチで今までヒールが履けなかったわけですよ。
でもね、足が大きいとか小さいとかで親に文句言っちゃいけないって。靴屋が用意すればいいんですから。
やっぱりお客様の笑顔ですよね。そのためにやってるんですよ。
何人かのお客様は店頭で思わず泣いちゃうんですよね。
前開きのサンダルを履くのが夢なんですなんて言われたら・・・靴屋みんな並べて打ち首だよね。
ぼくはもう星野くんに木型も技術も全部持ってってもらいたいですね。
もうね、彼もびっくりするぐらい器用だね。うちのこの材料で彼に作らせたらかなりいい線までいっちゃうんじゃないかなって。
(伊藤)イケメンだし。
(戸部さん)ダメですよ!奥さんいますからね!!(笑)
取材後記
後日、オーダーした靴が届きました!
ぴったりと足に合うヒールは履いていてとても心地よいです。
アトリエではサイズを測ってもらって、オーダーができるそうです!
HOSHINO BESPOKE SHOES アトリエ
東京都台東区東上野4-13-9
営業時間11:00-21:00(月曜火曜は定休日)
070-5566-3136
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