おじいちゃんに教えてもらった技術を活かすために
最寄りの駅を降りたら広い空に山々の空気。工房のミシンの前の窓からはその景色が見えます。nutteがサービスを開始してすぐに登録してくださったmookazさんにお話を伺いました。
もともとはSLで栄えた街
すごく気持ちのいいところですね。
わたし自身は大阪の出身なのであまり慣れないんですが、ここからの眺めはとても良いですね。
このあたりの地域はどういうところですか。
もともとはSLが走っていたそうで、最寄りの駅は、昔は大きな駅ですごく栄えてたみたいです。
いまはそれがなくなってしまって。
いつごろからからこちらにいらっしゃるんですか
2年前から。主人の実家を建て替えて同居したいということで。移ってきました。
義母は小学校の先生をしているんですよ。
この辺りの方はどんな仕事をしていらっしゃるんでしょうか
少し距離はあるけど、みなさん都心部に近いところに働きに出たりしていますね。
お店もあまりないですよね。
そうなんです。スーパーがばんばんつぶれて1軒しかない(笑)。
車があればどこへでも行けるので困りはしないんですが。
ここで縫製のお仕事をされてるんですね。
はい。ここで裁断もしています。
ミシンも独立した20年くらい前のものですが調子良く動いてくれるんですよ。
ご自身でも何か作られたりしますか
去年お祭りで小物のお店を出したんですけど
ランチバッグとかお手玉とかたくさん作って持って行ったら20点以上売れました。
この辺りの年配の方は『ものを買いたいんだけど買う機会がない』って言って、
とても喜んでくださって。
自分で作ったものが目の前で売れていくっていうのは楽しかったですね。
10代からおじさんの工場で働く
どのようにして縫製の世界に入られたんですか。
高校を途中でやめちゃってるんですが、叔父の縫製工場に拾ってもらったんです。
で、おじいちゃんにマンツーマンで教えてもらいました。
どのくらいの規模の工場ですか
1ライン5人くらいの小さい工場ですね。量産の工場でした。
大阪だったんですが、その頃はものすごい仕事があったんです。
やはり時代の流れで段々ダメになっていって、
やっていけないっていう感じになってつぶしちゃったですけど。
そこでずっと縫製を学ばれて
つぶれるまではいました。25歳くらいまで。
その後紹介してもらって着物リフォームのところでお手伝いしたり請け負ったり。
リメイクですね。ドレスに直したりとか仮縫いからやっています。
わたし自身も作ってみたりとか。
量産もご経験されていれば一点物もやってらっしゃったんですね
やはり身についてるのは量産ですね。
同じ物を何個も作る。縫ってるうちに体が慣れてくるんですよ。
アイテムはどういうものがお得意ですか
洋服の方が気合入りますね。
ジャケットでもパンツでも。
ただなかなかパンツを縫う機会がないんですね。
上物とかワンピース。
この間はジャケットみたいなのを久しぶりに縫ったんですが。
昔のところからは離れてしまったので、知りあいづてでお仕事を請け負ったりしています。
画期的なシステムだなって
知り合いからお仕事が入ってくるのはいいですね
それでもコンスタントにやろうと思ったらやはりnutteさんみたいなところで
自分で探すのがいいと思います。
なるほど。スタートして1年でだいぶお仕事も継続的に入ってきているのと、個人の方からの依頼も増えてきました
個人の方は型紙とかどうされるんですかね。
パターンの手直しはできるけど1から引くのは・・・向き不向きがありますね。
生産量としてはどのくらいできますか
手は早いほうだとおもうのである程度の量産がいいですね。自分に向いています。
基本は家で仕事したいと思っています。
ここに来て改めて思ったんですが、都心から離れたところだと、通勤時間が取られたり、どこか勤めに出るのも難しいんじゃないかなと思ったので、自宅でお仕事ができることってとても良いんだなと思いましたね。
そうなんです。
ずっとネットで探してたんですけどなかなか仕事自体がなくて。
内職ではなく、『縫製の仕事』っていうのが。
nutteだけでやっていけるならそれは最高です。
画期的なシステムですよね。
(佐藤)叔父様はまだお仕事をされているんですか
細々とやってます。
私たちの時代はひたすらやらされていたので身についてるんですが
いまはそこまでの仕事もないので。
袋物ばかり縫ったって技術はあがらないし。
わたし自身もおじいちゃんから叩き込まれたかんじなので
わたしも伝えなきゃいけない段階にきていると感じています。
わたしも初めは見習いで月5万円でやってましたからね。
いま残っている工場でも海外の研修生がすごく多いそうで、日本人で修行している方ってもういないんでしょうね。
そこまでのお仕事があればいいんですけど。
修行をするだけの仕事量がなかなか難しいでしょうね。
これからほんとにがんばらないと
今後はどのようなお仕事をされていくのでしょうか
あのミシンで縫えるものであればなんでもやりたいなと思うんですが
できれば服がやりたいですね。
ミシン縫いながら癒される部分があるので。
乗ってくると、頭が真っ白になって没頭できるんです。
ただ自分1人でやると自分でペースを作らないといけないので
目標を言えば誰かと一緒にやりたいとおもってるんです。
でもなかなか雇うって難しいのと、それ以上に収益を上げないといけないのでそれが大変。
収益を上げるのが本当に大変なお仕事ですもんね
そうなんですよね。
働きに出た方が割りがいいから、派遣で仕事したりもしていました。
『え!!こんなんでお金もらえるの!?』って。
これだけの収入を縫製でもらおうとおもったらどれだけ大変か・・・。
すごい技術を求められるのにすごい安いですもんね。
そうそう。ものすごいプレッシャーですもんね。
(佐藤)普段はどんなことをされてるんですか?
そうですね。そもそも店もないので家を出ないです。笑
(佐藤)じゃあネットで仕事ができたら
ばんばんざいですね!
一時、病気で体調を崩してしまって
入院をしていて足もおぼつかなくなっちゃって・・・
でもやっと戻ってきたんです。
当時はミシンの前にも座れなかったんですけど。
だからこれからほんとにがんばらないといけないんです。
死んだおじいちゃんに怒られる。(笑)
取材後記
ご自宅はmookazさんの工房だけでなくご主人の趣味のための防音室もあるそうで、素敵な暮らしぶりが伺えます。
その一方で、駅からの道にはシャッターが閉じたままの食品店などもあり、この地域だけで何かを生産し、消費する難しさも感じました。
nutteを通して技術のある職人さんがどこに住んでいても活躍できる未来を創っていきたいと強く思うインタビューでした。
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