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宣伝はほとんど無し! 口コミだけでリピーターを獲得するお直し屋さん

   

takao

 

失業からの一念発起

元々はお直しの会社にお勤めだったんですよね?
経歴を教えていただけますか?

工業高校を中退して、アルバイトと音楽活動をしていて、
夢みちゃった20代で(笑)がんばってて。
定職に就きたいなって色んなとこいってたけど1年もたなくて
求人見てなぜか『おもしろそうだな』っておもって
たまたまそこが、見習いからでもやる気あるならおいでよと入れてくれて。
入って1年ぐらいはほんとにしんどかったですね。
『シングルってなんやねん。』っていうレベルからスタートして。

でもそっからずっとこの仕事です。

別の会社で
『自社でリメイクをやって自社で販売する』というプロジェクトがあり、
経験とスキルアップのために転職したんですが
1年くらいでプロジェクトがたち消えになって全員クビになったんです。
そうなったときに、家族がいるんですけど、
無理を言ってやめさせてもらった前の会社に戻るのか、
それとも新しくお直しの会社を見つけて入るのか、
もしくは独立するかっていうのですごい迷ってて
やっぱりお直しの会社ってすごい給料も低く、
勤めてたときも貯金切り崩しながらやってたので
戻っても結局同じだなって。
このまま切り崩して貯金を無くしてしまうのか、
ってなったときにそれをアタマにして自分でやろうと。
一発勝負ですよね。顧客もゼロなんで。

それすごいですね。お客を持たずに独立ですか。

完璧無謀。去年の6月に開けて1年ちょっと。無事生活できてます。
直しはねぇ・・・たぶん中規模ぐらいがいちばん食えないレベルなんですよね。
大規模だったら圧倒的物量で裾上げなりなんなりバンバン取って
それをこなしていけばいいんですけど
中規模となるとキャパも少ないし、人を雇いすぎると閑散期に死んでしまう。

夏場とかどうしても売り上げ落ちますもんね。

服屋が売れないとっていうのが根本にある。僕も勤めてたときそうだったんですけど
お客さんの心をつかんでリピーターとして来てくれるっていうのが一番利益率もいいんで
直し屋としてはそこが一番勝負所かなって思ってる。
なので僕はこうして店舗つくって、内装も自分で全部やってます。

すごいですね。ちゃんとフィッティングルームもありますもんね。
お直し屋さんで扁平縫いとかもちゃんとある。

学生時代は工業高校だったんです。なので機械は得意な分野で。
扱うものが『金属』から『布』に変わっただけで、道具としてミシンという機械があるけど。
当然整備も大丈夫です。

お直し屋さんというよりはちょっとした工房ですね。
アパレルのサンプル工場みたいな設備。
お直し屋さんだとカットソーはロックして2本ステッチが多そうですけどね。

うーん・・・そのうち糸切れしそうですけどね。

ちゃんと扁平いれるお店ってあんまりなさそう。

大手とかは店舗においてなくても本社工場においてたりするんですけど
個人で2~3店舗とかだと無かったりしますね。

1

有名だろうがかっこいい店だろうが、縫っているのは人

集客はどうされていますか?

なんもしてないんですよ。チラシ看板に差し込んで、あとは通常どおり営業してるだけ。
Facebookもやってますけどそんなたいした効果はなくて
基本やっぱり口コミ。
近所の方はしょっちゅう来てくれます。

個人のお客様だけですか?

メーカーからはないです。前に勤めていた会社から下請けで入ってくる分くらいで。
やっぱりこの仕事は口コミですね。
結局縫ってるの人なんで。
いかに店が有名だろうが、いかにかっこいい店だろうが、人なんで。
うちの場合は受けた本人が縫うってお客さんがわかっているので
その辺の安心感はピカイチだと思います。
やっぱりお直し屋さんって
一番こわいのは受けた人と縫う人が違うとその微妙な差が結果クレームになったり
言った事がうまいこと縫子に伝わってなかったり。
それがぼくほんまにいやで。
で、まあ(店を)開けてしんどいけど勤めてるよりは良いです。

2

服の本質を見ている人かそうでないか

フィッティングして服全体のお直しとかもされたりしますか?

そうですね。個人的にですが数年前よりは全体的な直しは減った気がします。
僕もどっちかっていうとお勧めしていないです。
全体的なサイズ調整で、一番いいのがワンサイズぐらいなんです。
でもやっぱりワンサイズぐらいだったら、あんまり気にせず着る人がほとんど。
昔のサイズの大きすぎる服を
今着れるようにっていうお直しってがあるんですけど、
そういう服に関して言えばはリスクが高すぎる。

生地に負担もかかりますし
デザインも大きく変えることになってしまいますからね。

価格がかなり高額になってしまうし、
で当然できないことも多いじゃないですか。
オーダーじゃなくてもうカッティングしてあるんで。
ここはこれ以上どうしにもならないってところがサイズの大きすぎる昔の服って多すぎる。
とりあえずの立ち姿はいくら完璧でも、絶対に着心地が悪くなる。
そういうのをしっかり伝えてあげると、そのときは残念でも、
ここは信頼できるなっていう感じで
やっぱり次に他のもの持ってきてくれたりします。

やるべきでないことはやらないとお伝えするわけですね。

無理にやってとりあえずその時は着てみて『いいな』ってなっても
結局着てると『うわー肩こるわー』とかなって
なんか鬱憤があるままクローゼットの奥にその服が逃げてしまって。
じゃあやっぱりストレスみたいなものが残るじゃないですか。

けっこうな額を出したのにっていうこともありますもんね。

その不具合をいかにフィッティングの段階で見抜けるかっていうのが
接客する上で一番重要かなって感じですね。

大きなファッションビルに入ってるようなお直し屋さんだと、
そこまでされないじゃないですか。丈詰めを延々やるっていう…

僕も教わった訳じゃないんですけどね。
服の本質を見てる人かそうじゃないかっていう事だと思います。
デザインっていうのは、
どんな服でもだいたいはバランスとって作られてるものだと思うので、
お直しってものは『それを崩していくものだ』ってアタマにおいてやってると、
いかに崩さずに綺麗に直せるかを考えていけるんで。
それを考えないと、詰めただけの仕事になってしまう。
そうなるとお直し屋としては失敗。後が悪いって感じですね。

お若いのにすばらしいですね。

いま30歳で家族もいます。崖っぷちも崖っぷちですよ。
まあ、いずれ僕ももっと大きい店したいんで。

5

普通のお直し屋さんにするのはやめようと思ってたんです

メンテナンスとかどうされてるんですか?

全部自分で。

すごいですね!
糸調子とか目飛びとか、どうしてもミシンを開けなきゃいけないってときは?

カマとかも全部いじれますよ。僕ミシン屋さん知り合いいますけどキホン呼ばない。
電話で症状を言って。
トラブルシューティングのときに原因をその場にいる人間が理解できていないと
結局業者呼ぶ羽目になると思うんですよね。
でも原因はわかってて、対策もある程度わかってて、その理論みたいなものがだいたい入っているので、
ミシン屋さんに電話で聞いて『こんな調整方法でいけそうですか?』って聞いて
『それでいける思いますよ』みたいな感じで。
で、自分でちょっといじって。
本縫いはミシン屋レベルで調整できますね。

扁平もですか?目飛び始まると収集つかなくなりそうですね。
しかも古めですね。

古いです。
目飛びする原因ってほんとにいろいろあるんで
本縫いだったら一番多いのはカマがスイてたり
針と糸の組み合わせが悪かったり。
分厚いものだと段差のとことか。それはもうしょうがないんですよね。
そこを無理に踏んで縫おうとするから目飛びするだけで、
そこだけ手で回したらいいだけ。
その手間をちゃんと理解してる人間か
ミシンで縫えないのがおかしいと思う人間か、で仕上がりも違ってくる。

若い方のお直し屋さんって感じがしてセンスいいですね。
パターンマジック置いてるお直し屋さんはなかなかない。
※【パターンマジック(中道友子 著)】パターン教本。斬新で立体的なフォルムやディテールを多く掲載。

実用性皆無です(笑)。
店舗を作るときに普通のお直し屋さんにするのはやめようと思ってたんです。
で、フラットにしてるんです。
だいたいカウンターで隠してるんですけどあんなの面白くないから。

7

3

これからのお直しは既製服を楽しむためのプラスアルファ

どちらかっていうと古い服を直すっていうのはもう時代遅れだと思っていて
前着ていた服をもう一回着たいって、そもそもへたっている部分もあるし、
どうしてもデザイン上、古さが拭えないとこもあるので。
それだったら今のものを買ってやったほうがよっぽどいい。

ぼくはこれからのお直しっていうのは
今買った服にもうちょっとプラスαして
ここだけもうちょっと自分の好きなようにしたいとか。
そんな大掛かりな修理をする必要はないと思うんです。
高い服だろうがデイリーウエアだろうが
全部自分の好みのシルエットにしてしまった方がずっと着ていけるんで、
僕はその方が、もっと既製服を楽しめると思います。

なかなかそう考えているお直し屋さんって少ないですよね。

4

正解が無いのが考える楽しさ

お直し屋さんのお仕事は
決められた通り生産するのとは違いますもんね。

それが一番のおもしろさですね。
やり方ミスったら完全にアウト。失敗が100%許されない。
なおかつ補正方法がいっぱいあるんで
答えがないっていうのが考える楽しさになっている。
それが正解だと自分の経験値になるんで。

万一失敗された場合は買い取りですか?

実はここをオープンして以降失敗は無いです。
お客様は1500人ぐらい来てくださってますけどクレームはありません。
やっかいなのもありましたが無いですね。

パターンのお勉強ってされてないですよね?

全くやってないです。既製服の仮縫いをしているような感じです。

パターンの修正みたいなことも多いですよね。
よほど研究されてるんですね。

テーラーさんのブログを拝見したりしてます。
あくまでテーラーさんなのでまた違いますけど。
テーラーさんによっても違いますし、でも何カ所から情報を手に入れて
自分なりに理論を組み立ててやってます。
勉強がこの仕事いちばんですよね。経験と。
これからもっと勉強と経験を重ねて
唯一のお直し職人としてやっていきたいです。

若いうちからこれだけのお店を構えてすばらしいですね!
ご活躍を楽しみにしています。本日はありがとうございました。


 

 

取材後記


 

6

商店街を1本入った通りに並ぶ素敵なお直し屋さん。
オープンして1年。
おしゃれな自転車には子ども用のキャリーがついていて
毎朝、幼稚園に子どもを送ってから来るというイクメンの若いオーナー。
取材中にもお客様が出入りされて
本当にこの町の人たちにとても信頼されている様子が伺えました。

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