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誰もできないことにチャレンジしたいを持って飛び込んだ世界で見えたもの

   

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趣味の延長線上みたいなもん。
ほんとにお金儲けは下手なんですよね。

僕の場合は親父が特殊ミシン専門で扱っていて
ミシンだけは10何種類あったのをひと通りおしえてもらってたんで
親父の設備ほどじゃないけど
一応自分なりに順番にそろえていったんですけど。
もともと機械いじりが好きっていうのもあって
ミシンをバラバラにして組み立てたりするのが趣味やったんで
まあ趣味も兼ねてるんですよね。
プラモデル作るの好きな子どもで、大人になって洋服作ってるようなもんですわだから僕は特別に専門学校を出たこともない。全部独学やし。

縫製自体もですか?

はい。我流です。だから正しいのかどうかはわからないですけど。
特別大きなクレームをもらったこともないですし、これでいいんだろうなって。
服もわからなかったら買ってきてバラバラにしてこうやって縫うんだっていう・・・そんな人です。
松原の工場に行けばプリーツがやれるんです。こんなことばっかりやりながら。
ほんとに趣味の延長線上みたいなもん。お金儲けは下手なんですよね。

かなりマニアックなことをやられるんですね。

いや、やりたくないですよ。
趣味でやる分にはいいですけど、ご飯食えないんですよ。
正直こういうの2日とか3日かけて縫ってたら生活できないんで
2万か3万ぐらいやったら1日で終わらないとダメなんで
それだったらプレーンなTシャツやってるほうがご飯は食えますよね。
だから自分は人より変わったことができるって言ったって自己満足でしかない。

例えばコレクションブランドだったりすると…

一時期、東京とか積極的に行ってたときは宣伝にはなりましたね。
ぼく独立したの30ぐらいなんで10数年前なんですけど
そんときは自分を売り込みたかったんで。
でももういまは需要がないと思うんですよ。
だからビニールかかっちゃってるんですよね。

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なんか惜しいですね。この機械はちょっとみたことないなぁ。
メインとしてはこういう感じなんですね。

やりたかったっていうベきですね。
自分としては人と同じが何でも嫌いで、
人ができないってことにチャレンジしたいなっていう性格なもんで。
こういうのは使い方から提案してる。これ(プリーツ)は爆発的に売れたんですよ。

他は特別変わったものはないですよ。
奥は平2本ですしその横は平3本
オーバーロックに本縫い
手前がメロウです
いらないのは松原に置いてて。 小ロットなんで裁断機つかうこともない。
グリーンのシート敷いてロータリーカッターで切りますけどね。

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業界全体のこと考えたら
農家みたいに売り場と生産者が近ければ近いほどいいですよね。

基本的にはサンプルですか

そうですね。
ほとんどもう断るんですよね。できなさすぎて。
ここ数ヶ月の話ですけど。
縫製する人っていないんでしょうね。世の中に。
ましてやぼくみたいな年でやってる人って少ないですよね。

これだけのアトリエを構えてっていうのは
だいぶ減ってるんだろうなと思います。

僕の周りにも、もういないんですよ。
なんでサンプルやりだしたかっていうと、
外注さんがもうみんな引退されたとか忙しくなったら放って置かれるとかそれが連続したんで
外注使うのやーめたっと思って。
そうしないとお客さんに迷惑ばっかりかけてた時期があたんで自分のできる範囲でやろうかなって。

自分自身が、仕事がいっぱいになっても外注する先がなくて
自分たちで縫ってるだけだと食べていけないっていう状況だったので
なにかこの業界を変えられないかなってところからこのサービスを始めたんです。
国内の縫製業界を少しでもよくできないかなって。
やっぱり技術も伝わっていかないじゃないですか。

伝えるべきものでもないような気がしてきましたけどね
息子がやりたいって言ったら大反対します
普通にどっか勤めぇって言います。

それは間にいろいろ入っているから
単価が安くなっちゃうのもあるじゃないですか?

業界全体のこと考えたら農家みたいに売り場と生産者が近ければ近いほどいいですよね。卵みたいなもんで。
ただ縫製、繊維業界っていうのは3社も4社も入ってしまうから
原価はわずか3,000円ほどのものが売り場にでたら19,000円だのって
あれはよくないなっていうのは以前から思ってたんですけど。
社長のね、書いてる文章読んで 。
同じこと考えてるな、というふうに(思ってた)。
もし現実になったら、ほんとにいいことやなとは思ってるんです。

そうしたいですね、ほんとに。

僕ちなみに42歳なんですけど

同世代の職人さんと会う事あります?

女性の方がほとんどですね。

へぇ。仕事としてというよりは趣味みたいなんもんですか?

いえいえ。
ご主人がいらして、奥様がご自宅で自分の仕事としてやっている
というケースが多いかもしれないです。
この規模のアトリエというのは極めて少ないですね。
逆にこれだけの方がいらっしゃるというのは
ウチも売り出していきたいですよね。

指名されないとだめなわけですからね。

今はもうほんとにまだまだできたばかりのサービスですけどこれから。
それこそ農家のように、
「この人に縫って欲しい」という文化をつくっていきたいですよね。

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新しいことにチャレンジする意欲がなくなっていく

ぼくそれとほんとにね、この業界なんとか現金引き換えっていうのになれへんかなって思ってて。
昔からやってる方は高度成長期やバブルを経験されてるんで多少なりとも蓄えがあるんですよね。
だいぶ底をついてきたとは思うんですけど。
僕らみたいにこれから何かを目指す者というのは、1回も良い思い出がないので蓄えそのものがないんですよね。
だから瞬発力はあるんですけど持久力に欠けるんですよ。
1万着受注あるけどどうや、って言われたところでそれを回転させる資金がないから断らざるを得ないし。

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いま大阪の繊維業界が特にそうなんですけど、融資をまったく受けられない。 そうなってくるとほんとにもう『この仕事やりたいな』って思うことがあっても できないから断ることばっかりを繰り返す。
現金でデリバリーしてくれれば1万着受注がきたところでなんとか必死になって考えるんですよね。
でもお金ありきってなってくると『そんなもんはない』っていう答えにしかならないんで 新しいことにチャレンジする意欲がみんながなくなっていくんですよ。
お金の回転が早ければ早いほどほんとにいいなって。業界が活性すると思いますよ。
数ヶ月前に(nutteを)見たとき、ぼくめずらしく活字を必死に読みましたもん。
現実にこういうことができればおもしろいなってほんとに思いましたよ。
志がいいなって。まずね。 偉そうに上からいうてますけど。

社長38歳?後悔はないんですか?この世界に。

いや後悔しかないですよね。(笑)

ぼく、かろうじてバブルぎりぎり経験してるんですよ。 でも親父しか儲けてないんで。
ぼくはクルマ1台だけ買ってもらった。そんなに儲かるんやって。 親父ひとりなんですよ。
ぼくが手伝いしてたときに請求書切ったら1200万とか超えてるんです。
しかも加工なんでほぼ純利に近い粗利なんですよ。売り上げがそのまま利益みたいな。
すげえなって。なんぼくれるんかなー、と思ったら15万だけもらって(笑)。
さっさとこんな親父見切りつけて一人でやったんねんって。
そんとき1000万儲かるんだって夢見てたんですよ。 ところがなんのなんの・・・火を灯すように生活してますよ(笑)。

私は10何年か前に服飾の専門学校を出てるんですけど、
今この業界にいる同期はほとんどいないです。まず食えない業界で…
それはもうメーカーのデザイナーやパタンナーであったにしても
なかなか食える人は少ないですよね。業界が複雑すぎるので。
ただ、いまITの技術が伸びてきてて、
『IT×ファッション』っていう文化ができつつあるんですよね。

今やろうとしてはることは
業界そのものの『理想型』に近いんじゃないかなと

6のコピー
結局いまのアパレルメーカーが陥ってる病気とすれば
『凝りすぎて複雑すぎて縫製仕様も難しすぎて』
これはいまぼくらがやってる繊維業界全般で陥ってるとこだと思います。
ほんとにこの業界が廃れる原因になる。
消費者さんの声はどこに入ってるんだっていう・・・
どっかの有名なブランドの何かを足して2で割って作るようなのもありますしね。

例えばパリコレだって来年の春夏とかもう1年前に終わってるじゃないですか。
そんな前に企画して着るときにはどんなだかわかんないみたいな。
おかしいですよね。

これは見せ方だけの問題ならば伏せる必要があるのかとか。伏せ縫いが嫌ってわけじゃないんですよ。
必要性のないものを縫い代のオーバーロックのところが切り口当たって痛いとか
デニムとか硬い生地やったらはじめて伏せるわけじゃないですか。
普通のシフォンのやわらかいのを伏せるとか超高級な難易度の高い仕事を要求してきはるんですよ。何の意味もないとこで。

(*折伏せ縫い:シャツのアームホールや脇などを縫うときに丈夫にしたりステッチを見せないための縫い方 。)

レディースでですか?

レディースはもろそうですよ。ほんとにそういう人が多い。

よっぽどハイブランドですね。レディースでシフォンで伏せるって

意味が無い。それをぼくは声を大にして反対し続けてるんですけど、1人だけ嫌われていくっていう

ロックでいいだろっていうのは全然わかります(笑)
そこってやっぱり縫ってる人の見方ですよね

逆にこれは伏せた方がいいよなっていうときだってやっぱりあるんで別に伏せるのが嫌ってわけじゃないんですけど
最近変な傾向やなって。業界そのものが。

仕様を決める権利が職人にあってもいいんじゃないですかね?

ぼくはそう思ってます。別にどっちが偉いとかいうことはないですけど。
みんながお金儲けでやってるという大前提で考えるならば
いままで作り手側の人が余りにも儲からないというようになりすぎたなって。
売れるものは求められてるものであって。

この(nutteの)スタイルはなにがいいかといえば
ダイレクトに消費者さんの求めてるものを作るスタイルに切り替えられる
ほんまに今やろうとしてはることは理想。

業界そのものの理想型に近いんじゃないかなと。

やっぱり社長が職人あがりっていうのは、ぼくのなかではいちばん大きな事で。
現場をある程度理解した人がこういう形で間を取り持ってくれる。
両方の立場を解った上でこの事業を興すっていうのはおもしろいなって
めちゃくちゃ思ってはいる。

この事業を、縫製をやってきた人間がやるということが
私も大事なことだと思っています。

自信もってプロとしてお金もらってもいいって思えるアイテムに限定

主婦でも上手な人はむちゃくちゃうまいですよ。 ぼくが師匠と仰いでる人だって全然主婦ですけど、この間引退されたんですけどね。 うまい人は世の中になんぼでもいますよね。専門職じゃない主婦の方でも。

そうですよね。すごい人もいます。
nutteでも主婦の方が職人さんとして登録をしていただいています。

うち裏付とかやらないんで。
一切やらないってことではないんですけど。
同素材の三型つぶしでどうしてもジャケットがいるとか、コートがいるっていうケースもあるから。
ぼく、練習はするんですよね。うまくなりたいんで。
できないからやらないんじゃなくて、できるけどやらないっていうことだけは言っておきますが。
自分がそのレベルじゃないと思ってるのにそれを商売にするべきでないって思うんですよね。
お金がもらえるレベルまでなったときに仕事じゃないかなと思うんで
例えばスカートの裏地とか当然つくものに関してはいいんですけど
ジャケットやコート来られても、いや無理ですと。たぶん言うと思う。

どっかにいいカッコいうてるだけで、実は自分の評価をあえて下げたくないっていうのもあるんですよね。
得意なところと言わんまでも自信を持ってプロとしてお金もらってもいいって思えるアイテムに
限定しないとあかんと本気で思うんですよね。
将来的に重衣料もやらせもらえます、と自信持って言えるようになればもちろんやらせてもらいたいです。
重衣料のほうが実際問題単価もいいですからね。
でもまだまだ練習不足ですよ。自分の中ではね。

そういうのも含めてこういう職人さんですっていうのはわかるようにしたいです。
今はお客様がお仕事をあげて、職人さんが応募するだけの段階なんですけど、
もっと職人さんたちからアピールしてもらって、
お客様から『この職人さんにお願いしたい』って指名が入るようにしたいですね。
私もこの業界のために戦っていきたいと思ってますので、
一緒に戦ってもらいたいですね。職人さんたちに。


 

 



取材後記


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『僕はいたってノーマルな人間だと思ってるんですけど、どうやら変わってるらしいんでね。』
というと従業員の方が笑う。
主にメール等パソコン操作をされるのは女性職人さんで、
nutteを見つけて登録してくださったのもこの方だそう。

10このミシンを使うときは数ヶ月調整が必要で、とても気まぐれなミシンだという。


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